それは、ヒトのサービスである。

「宿泊業」に携わってきた立場で考えると、 ホテル、旅館、カプセルホテル、民泊は、滞在者(ゲスト)からすると、どれも「宿泊施設」にすぎない。

ホテル・旅館の場合、「日本の文化について」従業員と深く語り合うことはできない(ホテル内のBARでは一部可能)。
一方、ホームステイ型民泊であれば、家主と語り合え、外国人を積極的に受け入れている簡易宿所であれば、多国籍の旅行者ともゆっくり会話を楽しむことができる。
私がニュージーランドやオーストラリアのバックパッカーで出会った人達は、数日間~半年、長い人で1年間もかけて、各地のバックパッカーに泊まりながら、ゆっくり旅を楽んでいた。

賃貸住宅や戸建て住宅を扱う不動産会社は不動産業であり、ホテルや旅館は宿泊業。
特区民泊は賃貸借契約に基づきますが、民泊サービスは「宿泊業」であり、サービス業だと思います。

しかし、違法民泊を繰り返しているホストや違法民泊を扱っている運営会社の、どのくらいの人が「サービス業」ということに重きを置いているだろうか?

訪日外国人が求めるもの

ちょっと視点を変えて、訪日外国人は何を求めて日本に来て、民泊サービスには何を求めているだろうか?
人それぞれ目的は違えども、観光地巡り、買い物、盆栽・書道・武道等の日本の文化や習慣に触れ、アニメ・ゲーム・カワイイ文化のサブカルチャー等、参加型体験などが思い浮かぶ。
日本の古民家や合掌造り(私も泊まったことがある)に泊まり、日本人の暮らしを垣間見、体験して、現地の人達と交流を深めたい。
そういったニーズは多く聞かれる。勿論、民泊サービスの魅力の一つとして、ホテルや旅館より安価で泊まれるからという人も多い。

「おもてなし」の言葉が大流行し、知名度もUPしましたが、サービス業界では昔からCS(顧客満足)という考えを重視し追及してきました。
最近では過剰サービスと感じる時もありますが、それも時代の流れでしょう。

日本のGDPの70%がサービス産業です。レストラン、旅館、ドラックストア、スーパーなど至るところで接客サービスを受けます。
つまり、私たちの日頃の生活の中に、すでに「おもてなし文化」は根付いていたのです。
あの時、世界に向けて発信されただけなのです。

~『民泊サービス』に足りないもの(中)~
~『民泊サービス』に足りないもの(下)~